数物フロンティア・リーディング大学院

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前数理科学研究科長からのメッセージ


前数理科学研究科長
坪井 俊

数学・数理科学の教育研究は、数学という2千年以上にわたって培われてきた人類の文化を継承し、次世代に伝えていくとともに、現実の問題から絶えず提起される新しい対象に対する新しい数理的アプローチを作り上げていく営みです。その方法は、コンピュータの驚くべき発展により多くの数値実験が可能になった現在でも、基礎に立ち返り論理的な枠組みを整理していくという地道なものです。数理科学研究科は、その前身である理学部数学教室、教養学部数学教室の時代から、数学を確固たる基礎に持つ人材の養成を行ってきました。

この数学の伝統的な教育研究の重要性は、変わることはありませんが、それに加えて、数学・数理科学の諸科学・産業との関係を知ることが非常に重要になってきました。20世紀に形式化、抽象化された数学は、それにより応用の範囲をさらに拡げました。21世紀に入って計算情報技術の発展にも支えられて、理論が要請する計算が実際に可能になり、数学が様々な分野で活用されるようになってきました。このことから、数学・数理科学の成果をより積極的に応用していくという諸科学の要請、産業界の要請が、強くなってきています。それは既存の数学理論の応用にとどまらず、新しい数学理論の創成を求めるものです。

さて、数理科学研究科が理学系研究科、カブリ数物連携宇宙研究機構との緊密な連携の下で実施する文部科学省博士課程教育リーディングプログラム「数物フロンティア・リーディング大学院」は、数学と物理科学等との深い連携、数学と産業の幅広い連携を担い、新たな数理科学を作り出していくリーダーの養成を目指し、上に述べたような社会の負託にこたえようというものです。

数学・数理科学の研究において、諸科学・産業界における数学・数理科学への要請が新しい数学を創成する契機となることは、歴史的にも何度も起こってきたことです。また、諸科学・産業界において、独自に発達してきた数学・数理科学が応用を見出すこともしばしば起こりました。このプロセスは様々な形で繰り返されて、数学・数理科学と諸科学・産業の発展を促していますが、この博士課程教育リーディングプログラムではこのプロセスがより自然に実行できるように、さらにそれによって数学と物理科学等との深い連携、数学と産業の幅広い連携を体得できるように設計されています。

このプログラムの意図をよく理解した将来性あるコース生諸君が、プログラムで提供される様々なコースワークを生かして、数学を確固たる基礎を確立するとともに、深い連携と広い連携を体得し、将来の社会で活躍する力を蓄えていくことを期待しています。

2013年1月
坪井 俊